• Taichi Ogasawara

その4<許可申請から開業まで編>一棟貸しの宿泊施設「長崎坂宿GUEST」が完成するまで

最終更新: 2019年12月14日

長崎に一棟貸しの宿泊施設「長崎坂宿GUEST」を2019年11月に開業しました。


長崎市に小笠原企画が企画運営する

一棟貸しの宿泊施設「長崎坂宿guest」が開業しました


オープンまでの顛末を事業者目線で、時系列に沿ってまとめました。

小規模の宿泊施設やお店を開業したいという方にも参考になるかと思います。


1、その1〜物件探し編〜

2、その2〜計画から資金調達編〜

3、その3〜工事会社選定編〜

4、その4〜許可申請から開業まで編〜




<開業準備>1.5ヶ月

改修工事もある程度終わりが見えてきた頃に、家具や備品の購入、搬入を考えます。

まず最初に大きな電化製品、家具を買い揃えます。




電化製品

エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、(今回は購入を見送りましたが洗濯機、テレビなどもあると喜ばれます。)

冷蔵庫、電子レンジに関しては前に別の場所で使用していて綺麗なものがあったので再利用。

冷蔵庫は3万円程度の2ドアタイプ、電子レンジはニトリで7,000円くらいのものです。なるべく操作方法がシンプルで単機能なものが外国人観光客が使うので良いです。

エアコンは価格ドットコムで仕様と値段を比較しながら購入しました。

取り付け設置は別途、工務店におねがいしています。

そこそこ値段の高いものは楽天などで良さそうなお店を見つけたら、グーグルなどでそのお店や運営している店舗を検索します。だいたい、自社のwebショップをもっているので楽天やアマゾンの手数料分(だいたい1割から2割は安くなります)くらいは安くなる事が多いです。


コンロは火事の原因になりそうなガスコンロではなくIHコンロが良いかと思います。

IHヒーターに関しては、パナソニックや象印、シャープなどの国産メーカーのもので8,000円程度のものが良いです。

5,000円以下と安いIHヒーターもありますが、トラブルも多くて何回か買い直しているので少し値段はあがりますが大手国産メーカーでシンプルで単機能なものを選ぶのが良いです。


ポイント

・大型家電は楽天やアマゾンで買うより直接店舗のwebショップで購入した方が安く購入できる事がある

・家電は単機能で操作がシンプルなものが良い



家具備品類

家具はIKEAやニトリで揃えます。

IKEAでは県外でも配送してくれるので、大型家具を購入するときになるべくまとめて配送できるようにしっかりと戦略を練りましょう。IKEAでは対象地域外でも大型家具を1万円~1.5万円くらいで配送してくれます。この配送には大きさや商品点数の上限はないのでソファやマットレスなどを購入するときにまとめて他のものも購入しましょう。一部屋あたり20万円分くらい購入します。

またIKEAは日によっては凄く混みますので朝一番の開店時間に合わせて着くようにスケジュールをたて流のが良いです。

配送受付が混んでいると、手続きだけで1時間かかる場合もあります。

近くにIKEAがあって車で行けるというラッキーな人は閉店前の1時間も人が少なくて快適に買い物できるのでオススメです。



ニトリに関してはIKEAに比べると店舗数が多いのでIKEAで買い忘れたものや丁度よいサイズがない場合などに重宝します。ニトリの注意点はいくつかあって、

1つ目はニトリの公式webショップは注文から配送到着まで2週間以上かかるケースがある

また大型家具も早くて1週間。平均2週間ほど手元に届くまで時間がかかります。取り寄せなどになると1ヶ月待ちなどもあるので開業日が決まっていて気に入った商品がある場合は注意です。ちなみに私もすぐに持って帰りたかったので展示品を売って欲しいとお願いしたのですが、店舗で展示されている大型家具は基本的に購入できません。

ニトリで大型家具を購入する場合は配送してもらうか、店舗に届いたタイミングで引取に行くかしかないようです。



リネン類も揃えると結構な金額になります。タオル類は楽天やアマゾンで20枚セットなどの物が安く購入できます。

シーツ関係は比較検討したのですがやはりニトリが値段も質も良いように感じます。

最低でもリネン類は2セットは必要です。

カーテンも結構な金額になります。

窓のサイズを計測して購入してください。住宅宿泊事業法の場合も旅館業法の場合でもカーテンやカーペットは防炎仕様が消防法によって要求されていますので、購入の際には注意が必要です。



<支払った家具備品関係の総額>

IKEA 約20万円

ニトリ 約5万円

リネン類 約8万円

カーテン類 約5万円

他備品 約3万円



ポイント

・IKEAはしっかりと戦略をもって攻略するべし

・ニトリのwebショップや商品取り寄せは思っているより時間がかかるので注意

・シーツやタオルは最低でも2セット必要






<申請手続き>3週間

宿泊施設の申請手続きは何度かブログで書いていますが、年々法律も改正されかなり緩和されました。


民泊新法とは|住宅宿泊事業法について180日規制


まず用途地域制限で宿泊施設の営業が認められていない地域でも、180日の制限はあるものの合法的に営業することができるようになりました。

用途変更の場合の確認申請の手続きも100㎡以下から200㎡以下で3階建てまで手続き不要となり緩和されました。これにより3階建ての住宅を旅館、ホテル、簡易宿泊所へと用途変更することが簡単になりました。

さらにあわせて旅館業法も面積規制や構造規制が緩和され、いわゆる民泊タイプでの開業が可能になりました。

また、これまで曖昧に使われていた用語も整理されました.。


簡易宿泊所=ゲストハウスやカプセルホテルなど不特定多数で寝室や水回りを使用するもの

貸切タイプの民泊や民泊マンション、一等貸し切りの宿などはホテル・旅館となりました。


旅館業の許可をとるのには通常3つの法律を関わってきます。

・旅館業法

・建築基準法

・消防法


このうち、旅館業法と建築基準法に関しては規制緩和されたのですが消防法に関しては遅れていて、法律に整合性が取れていないと感じることが多々あります。



例えば、3階建て190㎡の木造住宅を宿泊施設に用途変更しようとした場合、


用途地域に問題なし→旅館業法OK 住宅宿泊事業法OK 旅館ホテル

用途地域に問題あり→旅館業法NG 住宅宿泊事業法OK 住宅


なのですが、消防法上では両方共ホテル・旅館になります。


そして一番問題となるパターンが特定小規模施設になるかどうかです。

特定小規模施設になると自動火災報知機設備が簡易なものにすることが出来ます。

(特定小規模施設:2階建て以下でかつ300㎡以下の建物)



ポイント

・戸建てを民泊として利用する場合は2階建て200㎡以下が設備要件も緩く消防設備も簡易なもので済む。

・旅館業取得の難易度は検査済証の有無に大きく関わる。

・旅館業法による営業許可が取れるなら、取ったほうが経営的に手続き的にも簡単




ですので3階建て190㎡の木造住宅の場合は旅館・ホテル・住宅であろうと自動火災報知設備を設置する必要が出てきます。


特定小規模だと器具をアマゾンや楽天で購入して自分で設置することもできますし価格10万円以下で、普通に自動火災報知器を設置すると判断された場合は消防設備士に依頼して設置工事をしてもらう必要があります。工事費も100万円程度かかってくる場合があります。


また、検査済証がない建物で旅館業の営業許可を取りたいという依頼や相談を受けるのですが各都道府県や市町村などの行政によって申請の難易度がかわり費用と時間も違ってくるので注意してください。

旅館業の営業許可書類の提出物の中に当該建物の検査済証を求められる場合がほとんどだと思いますが、なかった場合の対応は千差万別です。





私の体験談として、


1,建築士が確認し問題なければ良い。(実質、行政としては許可も図面相談も受け付けない。問題があった場合は施主もしくは建築士が責任を負う)

2,既存図面(一般図)を提出後、建築基準法上の避難規定は満たして下さいというケース。

3,建築基準法12条5項に則って資料作成して提出してくださいというケース。


3つくらいのパターンがありました。


労力、費用としては

確認申請図書が全く残っていない場合、


1のケースで

2のケースで

3のケースだと60


くらいです。


イメージとしては大都市圏に行くほど手続きは3に近づき、田舎に行くほど1に近づきます。

ちなみに福岡市は3のパターンです。

前の持ち主が図面類を紛失していて検査済証を取得していないというような建物を取得して宿泊施設に用途変更する場合は想定以上の費用と時間がかかると考えて下さい。



長崎の今回の物件ですが、長屋で築年数不詳でもちろん検査済証もなければ確認申請さえも怪しいといった問題のある物件でした。

当初の事業計画では、10月オープン時は180日規制はあるものの検査済証などの問題はスルーできる住宅宿泊事業法で開業し、来年9月までフルで営業する予定でした。

180日規制の起算点は毎年4月ですので10月〜3月までの間で180日営業し、4月から9月まで180日の間でフルで営業している間に、長崎市の建築指導課や生活衛生課と協議を重ねて旅館業の営業許可を取得していくといった計画でした。


それくらい時間がかかる可能性を考慮して事業計画を立てていたのですが、長崎市の建築指導課、生活衛生課にいって協議をしていると、想定していた3のパターンよりはややゆるい2のパターンで行ける可能性が出てきました。

で、急遽2のパターンで資料作成し旅館業の許可を目指すことにしました。


実際、住宅宿泊事業法での資料作成や設備基準と旅館業の2のパターンの場合ですと労力も手間も費用も似たようなものです。

いくつか指摘事項はあったものの問題になったのが寝室のマドの排煙でした。

排煙ですが、天井から80cm以内の開放できる窓の面積はその部屋の1/50以上なければならないと規定されています


例えば部屋の面積が10㎡(約6畳)ですと、窓の有効排煙面積は0.2㎡必要です。

引違いの掃き出し窓ですと幅が約2mあるので有効面積は半分の1mで高さが20cm以上の部分が天井から80cm以内だと合格です。


今回も当初の計画では窓の大きさに特に問題はなかったのですが、窓を取り付ける予定の丁度中心に構造柱があったために、計画の半分以下の面積の窓に変更になっていました。一転して排煙面積がギリギリになり急遽天井を10cm下げて有効排煙面積を確保しました。

資料を揃えて行政に提出して排煙面積はギリギリでクリア。これで保健所と建築指導課はだいたいクリアです。


建築指導課さえクリアできれば後は作業は煩雑ですが粛々と書類を揃えたら終わります。

消防関係も今回の建物平屋建てで面積が35㎡とかなり小さいので、特定小規模用施設に該当しますので簡易な自火報機の設置で事が足ります。


これで全ての準備が整ったので申請手続きに入ります。申請書類提出から約3週間で旅館業の営業許可が取得できました。



<申請関係スケジュール>


事前相談(9月中旬)

 ↓

必要書類を提出し立入検査の日程を調整(10/3)

 ↓

保健所、建築指導課、消防現地立ち入り調査(10/9)問題なし

 ↓

消防法令適合通知書の発行(10/16)

 ↓

その足で生活衛生課に消防法令適合通知書を提出(10/16)これで旅館業の提出書類が全て揃ったことになります

 ↓

旅館業営業許可証の発行(10/18)





<許可取得からはじめての予約まで>

まず、OTAに物件を載せないことには集客できません。

今回はとりあえずairbnbだけにしか登録しませんのでリスティングページを作成します。

リスティングページが公開されるには、営業許可番号の提出と営業許可証のコピーが必要になります。

すでに、賃料と融資の返済が始まっていますので一刻も早くオープンしたい所です。

ですので営業許可証が発行されると同時にリスティングページを登録します。

昨年の民泊新法の時は営業許可がおりてからairbnbのサイトで集客できるようになるまでは登録から公開されるまで3週間もかかってしまい、今回もそれくらい時間がかかるかと懸念していましたが、今回は登録から3日ほどで公開されました。


また平行して進めていた家具や備品の搬入もこの頃にはある程度落ち着いてきたので、竣工写真の撮影に移ります。

ネットで世界中の旅行者の目を惹きつけるのに一番重要なのは写真です。


竣工写真はプロのカメラマンに撮ってもらいます。


写真撮影も天気にも恵まれ無事に終わり、仕上がった写真をデータで貰ったらすぐさまairbnbのリスティングページにアップしました。

説明文も日本語と英語で記入して予約が入るのを待ちます。


airbnbの予約ページ

https://www.airbnb.jp/rooms/39256541




<最初の予約が入ってオープン>

待つこと約4日。はじめての予約が入りました。シンガポールからの親子が11月末に3名で予約をしてくれました。

最初の予約を皮切りに、

アメリカ、日本、オーストラリア、スウェーデン、モンゴルと様々な国の方々からも予約が入り順調な滑り出しとなりました。


旅館業営業許可証の発行(10/18)

 ↓

airbnbリスティングページの登録(10/19)

 ↓

airbnbリスティングページが公開(10/22)

 ↓

竣工写真の撮影(10/22)

 ↓

airbnbリスティングページの写真を公開(10/23)

 ↓

はじめての予約(10/27)



<追記:2019年12月>

レビューを貯めることを目的に11月は8組のゲストが宿泊してくれました。そのうち6組からレビューをもらい、ひとまず安心。

さぁ、これで少し安定するかと思いきや全然予約が入らない!

airbnbの集客力が落ちてるのか、問い合わせも来ず。

とりあえず、他のOTAや自社ホームページの整備を進める。


https://www.nagasaki-guest.com



どうなることやら。。。





<まとめ>

物件探しから最初の予約が入るまでに9ヶ月もの時間がかかってしまいましたが何とか年内にオープンすることができました。

最後に1から宿を始める目安の期間と金額を記してこのシリーズの結びとします。


>期間

8ヶ月〜1年

>資金

物件取得費:月の予想売上の20%内に収まるように。

改修費用:平米あたり10万円〜20万円

家具、備品:一部屋あたり50万円







<竣工データ>

名称:長崎坂宿GUEST HGK819

所在地:長崎市東小島町

主要用途:ホテル旅館

企画・設計・運営:小笠原企画

施工:株式会社アヤベ

面積:35㎡

規模:地上1階建

構造:木造

設計協力:REMORE ARCHITECTS

撮影:中尾桂介

HP:https://www.airbnb.jp/rooms/39256541





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